よこみち珍道中 三峰山編 第9話 霧の八丁平

しばらく前にパソコンを買い替えました。
ハンディカムの映像をデータ化するのが目的だったはずなんですが、タッチパネルに目が眩んで。



気が付けば、手持ちのハンディカムと互換性のないPCを買っていました。



本末転倒の名手。
よこみちです。



かなり放置してましたが、途中で打ち切るわけにもいかない。
かといって誰か読んでくれるわけでもない。
誰も得しないコーナー。
よこみち珍道中、三峰山編第9話。
はっじまっるよーっ。
(あえて陽気に)






三峰山の山頂をあとにしたよこみちとmark-na。
目指すは八丁平と呼ばれるエリアらしいけど、よこみちには事前の知識はなく。



さっきちらっと見た地図の上では、山頂からヘアピンの頭みたいにちょっとだけもとのルートから離れて、すぐに登ってきたルートに合流していて。
所要時間はおよそ5分、と書かれている。



「見晴らしが良いらしいんやけど、今日は曇ってるからなぁ」



とmark-naが言うが早いか、辺りにはうっすらとガスが立ち込めはじめ。
あっという間に深い霧に。



むむむ。
いくら見晴らしが良くても、見通しがわるけりゃ意味がない。



視野を遮っていた低木の林が途切れ、不意に開ける視界。



霧は濃く、200mくらい先までしか見えない。



緑色の大きくうねった地面は芝生のような短い草におおわれ、ところどころに腰ほどの高さの木が生えている。





…ゴルフ場みたい。



起伏が激しく、視界の端は急な斜面になって霧の向こうへと落ちていってるから、こんなとこでゴルフなんかしたら、何年かけても終わりそうにないけど。



それにしても。



濃い霧のかたまりが斜面の下から昇って、芝生を撫でて。
よこみちたちを通り過ぎていく。



遠景は霧にさえぎられて、ここだけが孤立している。
まるで箱庭のなかにいるかのような錯覚。



晴れた日も良いけど。
こういう幻想的な風景も良いなぁ。



ふと足元に目をやると、黒豆のようなものがぽろぽろと、20個くらいかたまって落ちている。



ん?
シカか何かのフン、かな。



こんな、隠れようがないようなところに棲んでんだね。



濃い霧の向こうから、不意にシカが現われたりしたら。
素敵だろうけど、そうとうビックリするだろうな。



今も息を潜めて、縄張りに入ってきたニンゲンの様子をうかがってるんだろうか。



そう思ってあたりを見ると、さっきまで作り物のように幻想的に思えた風景が、まるで霧自体が息づいているかのように生きものの気配に盈ちてきて。



「あ、この道で元のルートに戻れるみたい」



mark-naが指差す先には、木立のなかに続く径が。



…て、あれ?
もうおわり?



その径を歩くと、すぐに見覚えのある風景。



すっかり葉の落ちた低木の林に、一面の落ち葉の絨毯。



山頂のすぐ手前辺り、だな。



時間にしてわずか10分程度。



登りの時にはまったく気付かなかった分岐。
そこからつながっていた、別世界のような八丁平の風景。
ふと振り返ってみても、八丁平ヘ戻るみちはあやふやで。



キツネにつままれたような、夢でも見ていたような。



ついさっきまで山頂で感じていた物足りなさは吹き飛び、ここまで来て良かった、と思うよこみちなのであった。



つづく。