金魚救済
どもども。
本年度ベスト平凡ニスト賞受賞、よこみちです。
夏、といえばお祭り。
お祭りと言えば夜店。
そして、夜店といえば金魚すくい。
子供はすぐ金魚すくいをやりたがりますが、ご存じの通りすくったあとの金魚が困りもんで。
生き物だけにぞんざいに扱うわけにもいかず、水槽にいれて毎日餌をやると、これがまたどんどん大きくなるわけで。
仕事で伺ったお客さんの家で、時々フナみたいに大きく育った金魚を見かけるんですが、こんなになるまで餌をやり続けなくちゃなんないのか、と、少しブルーになります。
…グッピーとかネオンテトラみたいな小さな魚が飼いたかったのに。
よこみち家では、昨年救出した金魚がすくすく育ち、もはやポイでは掬えない大きさに。
世話はよこみちの担当。
毎朝、会社に遅刻しそうなときも忘れず餌をあげて。
小さな水槽なので、少し窮屈になってきたかも、なんて思いながらも、わざわざ金魚のために大きな水槽を買うのも何だか。
とまぁ、金魚すくい自体が嫌いなわけじゃないけど、そうそう気やすく救わせるわけにはいかないわけで。
でまぁ、イチヒメが金魚すくいをしたいと言っても、かたくなに拒んでたんだけど。
せっかくのお祭りなのに、そんな大人の事情を押しつけるのもかわいそうだし、スーパーボールすくいばかりで飽きてきたんじゃないかと思い。
「やっても良いけど、金魚はもらわず返してね」
と、すこし矛盾したような条件のもと、金魚すくいのテントの方へ。
金魚のたらいの前には、中高年女子が一名。
何だかたらいのなかの金魚が少ないような。
いや、ちょっと待て。
たらいの前で陣取っているおばちゃんのお椀のなかには、柳川鍋でもはじめんばかりの金魚の群れ。
おばちゃんは、それでもまだ一心不乱に金魚をすくい続けている。
ひええ、達人だ。
プラスチックで出来てんじゃないか、と疑ってしまうほど、まったく破ける気配がないおばちゃんのポイ。
すげぇ。
お椀がいっぱいになって、おばちゃんは満足したのか。
「もうええわ」
と、お椀の金魚を放流。
すっげ。
ポイを無傷のまま返すひと、はじめて見た。
よこみちが興奮気味に後ろで見ているのに気付いたのか、店員から景品の金魚を受け取ったおばちゃんは振り返り。
「お嬢ちゃん、どうぞ」
と、イチヒメに金魚を渡そうとして。
よこみちの心からの拒絶を遠慮と勘違いしたおばちゃんは、イチヒメに金魚を押しつけて満足げに立ち去り。
茫然とするよこみち一家。
金魚すくいしてないのに、金魚だけ増えてもうた!