富士からの脱出
ニタローが夜泣をして睡眠不足のよこみちです。
何か不満なことがあるけれども、何が不満か言葉にできないもどかしさで泣き喚くんでしょうけど、こっちとしても対処のしようがない。
こういう時は、早く寝ることをあきらめるのが肝心。
だっこして軽く散歩してきたり、ひたすら子守歌を歌ったり。
あぐらをかいたうえに座らせて、ニュースとかを見させたり。
しばらくほったらかして泣かせるのも案外効果的だったり。
寝かそうとすればするほど逆効果みたいです。
さてそんな半分寝たままのよこみちがお送りする富士顛末記、下山したのに続きます。
ようやくバス停にたどり着いたものの、最終バスは2時間前にすでに出ていて、ひとっこひとりいない霧のバス停で茫然とするよこみちとmark-na。
さて、どうしよう。
レストハウスのガラス戸は閉まってて、内側にカーテンがかかっている。
ただ、カーテンの隙間からは光が漏れているので、誰かいるかもしんない。
mark-naが、ドアをノックして開けようとする。
開いた。
中に半身を突っ込んだかたちで、中にいる人と話をするmark-na。
会話の内容が聞き取れないまま外で待機するよこみち。
mark-naが礼を言って出て来る。
「タクシーの電話番号聞いたから、呼ぶなぁ」
助かった。
いくらかかるかわからんが、こんなとこで明日の始発バスを待つよりよっぽど良い。
とりあえずバスの待合用のベンチに荷物を置いて、その横に腰掛ける。
あー、疲れた。
「20分くらいで来れるってさ」
マチナカじゃないから時間かかるわな。
「待ってる間に、サンダルに履きかえよっか」
おー、それだそれそれ。
待ちわびた登山靴からの解放。
まず、ズボンの裾を靴に固定していた、ぐるぐる巻きのビニールテープを外す。
おぉ。
石ころどころか、土ぼこりすら入ってない。
大成功だ。
防砂用のスパッツなんか買わなくても、これで十分やね。
靴ひもをほどいて、ゆるめてゆく。
ふわっ、と、足の甲が膨らむような感覚。
靴から、一気に足を引き抜く。
ぶわああん、と、血がめぐる。
はぁぁぁ。
足湯に浸かったみたいに、足だけがじんわり暖かい。
分厚い登山用の靴下も脱いで、サンダルに履きかえる。
雨具の上着ももう脱いでしまおう。
冷たい空気を肌で感じる。
あぁあ、なんて開放的。
おっと、荷造りしとかなきゃ。
雨具は畳んでザックに。
登山靴は、ビニール袋に入れて靴ひもをザックにくくりつける。
ストックを短くしときたいけど、どろどろのままだと砂を噛んだりするから、ティッシュで拭いて、と。
そうこうしてるうちに、タクシーが到着した。
慌ててストックを短くするよこみち。
さぁ、お風呂お風呂。
トランクにザックを載せてタクシーに乗り込むふたり。
長かった旅も、ようやく終わるのか?
以下次号。