格好良いとは、こういうことさ

ネット上には、逆立ちしようが何しようが太刀打ちできない専門的知識の持ち主が山ほどいる。



たとえばガラス板を磨き上げて凹面鏡にし、反射望遠鏡を自作する人がいたり。
日本中の山に登っては詳細なレポートを残す人がいたり。



すごいなぁ、と思う反面、自分が凡人であることを思い知らされて何だか軽くヘコんでしまう。



専門的な知識を簡単に調べることができるのは便利だけど、これだけは人に負けないと思える得意分野への自信は持ちにくい世の中ですね。
ライバルがしょっぱなから日本最高レベルなんだから。



そんなときは無理して張り合わず潔く負けを認めて、楽しい凡人ライフを満喫しましょう。



さてそんな夢のない凡人よこみちの書く、別に何かの役に立つわけでもない富士登山記、鋭意下山中です。






山小屋の前で靴を脱いで休憩中のよこみちと、なかなかトイレから戻らないmark-na。



その他に、一組の親子がその山小屋の前で休憩していた。
お父さんと小学校高学年くらいのお兄ちゃんとその弟。



ちっこいのに、頑張るなぁ。



よこみちが感心していると、mark-naがようやくトイレからでてきた。



「ちょっと楽ンなった」



そりゃ良かった。



こころなしか、顔色がマシになっている(とはいえもともと真っ白だけどね)。



さ、靴を履き直そうか。



ぎゅ、ぎゅ。



幼い兄弟の会話が聞こえる。



「疲れたんやったらお兄ちゃんが荷物持ったろ」



なんてええお兄ちゃんなんや!
こんな三十路のおっさんでも挫けてしまいそうな過酷な登山道で、お兄ちゃんとはいえまだ幼い子が弟を思いやってる。



格好良いぜ、お兄ちゃん。



そんな素敵な兄弟をよそに、自分のことで精一杯なよこみち。



下りなので、靴ひもは痛いくらいキツく締める。



さて、靴のなかに砂が入んないように工夫しなきゃ。



さっきのビニール袋は蒸れ蒸れで失敗だった。



今度は、ズボンの裾を靴にかぶせるようにちょっとローライズ気味にして、と。
で、裾と靴の境目を、ビニールテープで。



ぐるぐるぐるっ!



こっちも。



ぐるぐるぐるっ!



見た目は悪いけど、靴とズボンが一体化して砂は入らない、…はず。



なんたって蒸れないし。



さぁ、もうひと踏張り。
気合いを入れ直すよこみちとmark-na。
麓はまだ見えてこない。