富士山レポート、再開

みなさんお元気ですか?
そうそう、お盆に子供たちを連れて【崖の上のポニョ】観に行きました。
映画の序盤で、よこみちの好きなカンブリア紀の生きもの、オパビニアやアノマロカリスが泳いでてちょっとテンションあがったものの、カミさんや子供に、
「ほらほら、あれ。
眼が5つあるんやで」
とか言うても相手してくれないやろうから、何も言わずじっと我慢。
海水に住んでたポニョを水道水に入れたら、浸透圧でえらいことなってまう、とか。
ポニョの入ったバケツにヤツデの葉っぱを乗せて隠すけど、ヤツデは魚毒があるからあかんて、とか。
子供にそんなんいうたら、
「夢のないおっさんやな」
的な目で睨まれること請け合い。
子供向けの映画でそんなとこに突っ込んだらアカンで、という、作者の罠やね。



さてさて、もう読者も作者も忘れつつある富士山レポート。
再開です。






蝋燭くらいの明るさの白熱灯が照らす薄暗い部屋のなか、ビニール袋のがさがさという耳障りな音が異様に大きく聞こえる。



新たに到着した宿泊客なんだろう。
山小屋のお兄さんが、3〜4人のおばちゃんたちを案内してるようだ。
何やら小さな声で話し合っている。



しまった。



よこみちはようやく事態を把握した。
他の宿泊客の音が気になって眠れないかもしれないから、耳栓を持っていくと良いらしいよ、と出発前にmark-naが言ってたっけ。
結局そんなに気になんないだろうってタカをくくってたんだけど。



起きちゃったよ。



さっきのおばさん達は布団に入った様子なのに、まだ小さな声で話し合っている。
寝室の入り口のカーテンが半開きで、隣の部屋からの明かりが漏れて、よこみちの顔面を直撃している。



むぅ、寝れない。



今何時なんやろうか?
あしたは4時に起きて、まだ相当のぼらなあかんから、ここでしっかりと休んでおきたいのに。



寝返りを打つものの、衣擦れの音をできるだけたてないように気をつかってしまい、余計に目が冴えるよこみち。



まずいな。



こういうときに時間を気にすると余計に眠れなくなるのに、いっかい気になるともうダメ。
さっきから何分くらい起きてるか、とか。あと何時間眠れる、とか。



悶々としながらまた寝返りを打つよこみち。



いつのまにかおばさん達の声は聞こえなくなってたけど、何やら隣の部屋が騒がしくなったみたい。
夜間登山の団体さんが、隣の部屋に入ってきたらしい。



ちいさくガイドさんの声が聞こえる。



「……今は…………時ですので……まで20分ほどちょっと休憩し………上着はそのまま着ておいてくだ……らだが冷えますので…………」



むぅ、20分ほどいるのか。



…寝れない。



ええい!
埒があかん。
いったんトイレでも行って、外の空気を吸ってくるか。



がさがさ。



できるだけ音を立てないように気を付けながら、上着を手探りで掴み取り、忍び足で寝室を出るよこみち。



隣の部屋には、団体さんが休憩中。
みんなちょっとしんどそうだ。



修業じゃないんだから、もっとゆっくり登れば良いのに。



ツアーだと、みんなのペースに合わせて行かなきゃなんないから大変やろうな。



団体さんの間を通り、土間の方へ。
トイレ用のサンダルは山小屋に置いてあるけど、トイレの時だけにしてね、って山小屋のお兄さんが言ってたっけ。
ちょっと星を見ようと思ったので、自分のサンダルを履く。



山小屋のお兄さんと目が合った。



ずっと起きてはるんですか?
「いえ、交替で寝るんです」
大変っすねぇ。



シーズン中、ずっと山小屋で寝泊りしはるんやろか?
大変な仕事やなぁ、と感心しつつ、山小屋の外へ。



うわ、人がいっぱい。



山小屋の前で立ち止まって休んでいる人たちをかきわけ、とりあえずトイレに来たものの、たいしておしっこも出ない。



トイレの前の手摺りに肘をつき、空を見るよこみち。
相変わらず上には雲ひとつない。



んー、山小屋の明かりが眩しくて、ほとんど星は見えないや。
夜間登山してて山小屋から離れたら、綺麗に星が見えるんだろうな。



東の空高くに、満月だけがぽっかりと浮かんでいる。



あれ?



もっと夜遅い時間やと思ってたけど、満月がまだ東の空にあるなら、そんなに遅い時間でもないみたい。



もうちょっと寝るか。



山小屋へ入り、音を立てないように静かに寝床に戻ったよこみち。
外へ出たのが良い気分転換になったらしく、横になったとたん眠りのなかへと落ちていった。