よこみち珍道中 三峰山編 第7話 ピンピン虫と物足りない山頂 中編
もうすぐ小学生になるイチヒメに子供部屋を用意するため、物置部屋を改革中。
よこみちの画材など、今は使われていないものたちが安置してあったので、新しい移住先を求めておおわらわです。
灯を見るより平凡。
よこみちです。
毎度お馴染み、だれもが読み飛ばすネコマタギ的冒険活劇。
よこみち珍道中、三峰山編第7話。
はじまり、はじまり。
三峰山山頂には、一等三角点というのがあって。
まあ、一等だからといって、どう、ということもないんだけど。
別に、名峰だから一等、てわけでもないし。
だいたい40km四方にひとつずつ、全国で1000ヵ所くらいあって、それ目当てに山を登るひともいるらしい。
たしかに、一等、って聞くと、何だか得したような。
さて、と。
昼食をとるのに、なにか腰掛けるところがあれば良いんだけど。
山頂付近を見まわしても、ベンチも手ごろな石もない。
地面は湿り気を帯びていて草もまばら。
じかに座り込むのは少し遠慮したいなぁ。
レジャーシートみたいなのでも持ってくれば良かったか。
見晴らしの良い位置から少し離れたところで、mark-naが手まねきをしている。
すっかり葉の落ちた木の根元あたりに、スノーボードより少し長いくらいの大きさの板が落ちている。
板は少し朽ちはじめていて、これまた湿ってはいるものの、地面に直接座り込むよりはマシかな。
張り出した枝に、汗で湿ったシャツを干すmark-na。
お。
細い枝でも、意外としっかりしてるもんだね。
よこみちも、レインコートを脱いで枝に掛け、湿ったシャツを着替えると、ザックに入れてあったダウンジャケットを取り出して羽織る。
曇り空で陽は当たらないし、冷たく湿った空気なので乾くはずはないけど。
横を見ると、mark-naがザックの中身を次々と枝に掛けていて。
多分、奥の方にしまい込んだものを出そうとしているんだろうけど。
湿った地面にじかに置きたくないだけなんだろうけど。
…なんだろう。
アウトドアというより。
もっと別の、どこかで見たことのあるような状況。
何かを思い出そうとするよこみちをよそに、てきぱきとガスバーナーに火を着け、お湯を沸かしはじめるmark-na。
その前かがみにしゃがみこんだ背中に、なぜか漂う哀愁。
そして、妙な生活感。
…あ。
この光景はまさに。
公園で自炊するひと、だ。
思わず口に出し、ひとしきり笑ったものの。
取り返しのつかない台無し感と、なぜか漂う妙な生活感のなか、カップヌードルをすすりこむ三十路男子ふたりであった。
つづく!